私の名前は東郷由香里。白椿学院二年生A組の学級委員をしていて、周りからは歩く校則教本と言われている。それもそのはず。私はとにかく適当、ごちゃごちゃ、なんとなくが嫌いできっちりとしたいと考えるタイプだから。

 私はいつも適当に何かをしている人を見ると先生でもないのに叱ってしまう。一年生の頃はとにかく全てにおいて正してきたけれど、そのせいでこんな二つ名を付けられたことが恥ずかしくて最近はある程度抑えているつもりだ。

 ただ最近、私がどうしても許せない人物がいる。それは同じクラスの黒須沙耶だ。彼女は確かに世間的には珍しいとされるΩだ。そのせいもあってか周りからは無視されたり、陰口を言われたりしているのは知っている。

 しかし、彼女は逆に一人狼の如く自分勝手でとにかく適当なのだ。平気で授業をサボるし、頻繁に発情期だからと言って学校を休んだり、発情期の助長が見られるからだとか言って早退や授業を抜け出している。確かにΩの発情期というものは人によって頻繁に起こる人や数ヶ月に何日間かといったように個体差はあるけれど、彼女の頻度は明らかにサボる言い訳にしている。

 私はαが偉いだとかΩが人より劣っているだとかそういったことは一切考えていない。ただ、彼女は自分がΩだからと言い訳にして面倒なことから逃げているとしか思えないのだ。

 今日も昼休みが明けた後、「発情期の助長が見られるんで早退します」と言って午後の授業が始まる前に教室を抜け出していた。

 ついこの間も発情期がと言っていたはずなのに頻度が高すぎる。本当に発情期なら何の問題もない。しかし、早退したはずの彼女が空き教室で寝ていたとか、漫画や雑誌を読んでいたという噂が後を絶えないのだ。

 彼女は共感者が同じ学年にいないことをいいことに、明らかにΩを身勝手に利用している。

 私はこのクラスの学級委員として今日という今日はしっかりと言ってやろうと、授業が終わると一目散に黒須沙耶を探しに向かった。

「今日こそガツンと言って明日からはしっかりと嘘をつかずに授業を受けてもらうんだから」

 そう思いながらまだいると思われる彼女を探す。嘘をついているとしたらまだ学院内にいるはずだ。

 そして彼女はすぐに見付かった。予想通り、普段あまり使われていない技術校舎は不真面目な子たちがよく利用していると相場が決まっている。

「こんなところで何をしているのかしら? 沙耶さん」

「ん? 誰?」

 彼女は窓際の机に座り、だらしなく制服を着崩していた。私は彼女に話し掛けながらも近付く。

「誰じゃないでしょう? あなた自分のクラスの学級委員も忘れているの?」

「あぁ……あのいつもうるさい人か……」

 なんて人だ。彼女は私に向かってうるさい人だと言ってのけた。

「な……あなたねぇ!」

 私はつい声を荒げてしまう。

「で、私に何か用?」

 彼女はまるで何も悪いことをしていない素振りでことを進める。

「授業を発情期だと嘘ついてサボっておいて何か用ですって? あなたいくらΩだからってふざけるのもいい加減に……」

「あー……それ以上近付かない方がいいよ。今日は本当に発情期だから」

 彼女はそう言って適当にやり過ごそうとしている。しかし、今日という今日はガツンと言ってやると決めたのだ。そう嘘に付き合っている暇はない。

「何が発情期ですって? あなたこの間も発情期だって言ってお休みしていたでしょう? 今日と言う今日は……」

 私は沙耶さんに説教をしながら近付くと、ふと良い匂いが鼻についたことに気付き、その匂いがあまりにも魅力的で私は思わずドキっとしてしまう。それはまるで花のような、不思議な匂いだ。

「っ……あ、あれ?」

 私は彼女に一歩近付く度にクラクラとしてしまう。頭が痛いとか貧血だとかそういうのではない。まるで花の誘惑に魅了されたかのような感覚だ。

「それに私のはフェロモンが強いからβもって……あー……」

 私は急激に興奮を催してしまう。まさか本当に発情期に当てられてしまったとでもいうのだろうか。

「う……あ、あれ……? な、何これ……」

 私は胸が急にドキドキしていることに動揺してしまう。それにあんなにも嫌いだったはずの彼女が愛おしく思えてしまっている。

「まさか今日に限って薬忘れるのが痛手になるなんて……普通に帰宅すれば良かったかな……でもまぁ、東郷さん意外とうるさくしてなければ可愛いから、いいか」

 彼女が何かを言っている。しかし、胸がどんどんドキドキしていて、ふわふわとしている私の耳には届かない。私は私を抑えることが出来ず、思わず沙耶さんに飛び付き、両手で彼女の頬を掴むとキスをしてしまう。

「んっ……はぁ……んぁっ……はぁ……」

 これがΩの発情期に当てられてしまった女性の反応なのか、私は自分の欲望を彼女にぶつけてしまう。

「んんっ……はぁ……ぁむ……んん……」

 舌を絡めたキス。彼女とはそういった関係でないにも関わらず、私は理性なく彼女に自分の欲求をぶつけた。

「っぷは……はぁ……はぁ……」

 私の頭はキスをした時点で真っ白になっていて、自分の欲望のままに彼女を求めてしまっている。そうして今度は彼女の制服の裾から左手を伸ばすと胸の衣のボタンを外すし、その実りを揉みしだく。

「あっ……んっ……」

 沙耶さんは下着を外された同時に艶やかな声を上げた。私はそれを聞いてますます胸の鼓動が早くなってしまう。

 そして、私は彼女の耳筋を舐めながらも胸の先端を弄ぶ。

「んんっ……ああっ……」

 沙耶さんは可愛らしい声で鳴いた。こんなはずでは無かったのにと一瞬思ってしまっても次の瞬間には忘れ、彼女に夢中になってしまう。それほどまでに私は魅了されてしまっているのだ。

「んんーっ……あぁっ……はぁ……」

 私が彼女の首筋を蛇のように舌を這わせると、うっとりとした声で喜びを上げている。私は夢中になって行為を続けた。そして、早くも私は空いた右手を沙耶さんのスカートの中へと潜りこませた。

「んっ……」

 ショーツの上からでも分かるほどしっとりと濡れているその花蕾は蜜を滴らせ指を欲しているのが分かった。私は下着の上から指をひと撫ですると、すぐさま手を中へと入れた。

「んぁっ……ああっ……ふぅ……」

 沙耶さんは少し苦い顔をしたが、すぐさまその表情は恍惚とした表情に変わり私の指を招き入れる。

 私は再び彼女にキスをすると、中指と薬指を立てて彼女の花筒に押し込む。

「んんーーっ。ああっ……」

 ぐちゃり、と鈍い音がして私の指を蜜が絡む。私はそんなことお構いなしに指を動かした。

「あぁっ……くぅっ……」

 指を動かす度に彼女が嫌らしい声を上げる。私はそれをもっと聞きたいと指を動かし続ける。

「んんっ……私にも……んっ……させてよ」

 沙耶さんはそう言うと、今度は彼女が私のスカートを捲り、下着の中へと右手を潜りこますと、私と同じように中指と薬指を花蕾へと押し込んだ。

「ああっ! んんっ……はぁ……」

 私も興奮しきってしまっていたからか、下着は随分と濡れていて蜜を漏らしていたのだ。

 私と沙耶さんはお互いの花蕾を恥ずかしげもなく弄ぶ。まるで初めてする行為とは思えないほど熱く、激しく私たちは乱れていく。

「あぁっ……そこ……や、だめっ……んんっ……」

 私も彼女と同じように声を荒げてもっと欲しい、もっと激しくして欲しいと善がってしまう。

「んんっ……あぁっ……うぅっ……」

 彼女も私と同じように乱れ、卑しい声をあげる。私は今までにないほどの興奮と発情をしてしまっていた。

「ああっ……んんっ……はぁ……」

 私は再び彼女にキスをする。興奮のあまりに唾液が絡む。

「んむっ……んんっ……はぁ、んんっ……」

 体は熱を帯びどんどん淫らになっていく。もう既に私の頭は自分が何をしに来たのかすら思い出せない。

「ああっ……やっ……東郷さん激しっ……ああっ……私、もうだ、駄目……」

 沙耶さんは今までに聞いたことのない可愛らしい声で私に色っぽい声をあげている。私は更に指を強く前後させ彼女を強く愛撫した。

「やっ……だめ……い、いっちゃ……ああっ……ああああああああああっ!!」

 彼女は大きな声を上げて体を痙攣させた。沙耶さんは普段あんなに憎たらしい雰囲気があるのにやっぱり女の子なんだ。

「うっ……あぁっ……はぁ……」

 私はゆっくりと花蕾から指を引き抜くと、どろりと甘い蜜が零れ落ちる。しかし、それだけでは終わらなかった。今度は彼女が私の中に入れていた指を激しく動かし始めたのだ。

「ふっ……今度は、あなたの……ばん」

 絶頂したばかりのうっとりとした表情で、私を睨み付けると沙耶さんは私に体を寄せる。

「うあっ……ああっ……はぁ……」

 ふわっと彼女の髪の匂いが鼻につき、私はそれだけでもイってしまいそうだ。沙耶さんは私を左手でぎゅっと抱きしめると、どんどん指を動かすスピードを早くした。

「ああっ……やぁっ……んんっ……」

 興奮しているからか、発情期に当てられてしまっているのか、私は今までに感じたことのない快感を味わってしまう。

「あっ……だ、だめ……ちょ、ちよっと待っ……て……んぁっ!」

 激しく動く指に私はすぐさま絶頂に近付きそうになってしまう。前身が熱くて頭が真っ白になっていく。もう快楽を感じること以外は何も考えられない。

「あぁっ……やぁ……も、もう駄目……いっちゃ……う……」

「いいよ……東郷さんのイくところ見せて……」

 沙耶さんは私の耳元で甘く囁いた。そして、かぷりと私の耳を甘噛みした瞬間。

「あぁっ……あぁあああああああああああっ!!」

 私は目の前が真っ白になるほどの快楽を感じて全身から快感を放出した。そして、絶頂を感じながらも、また沙耶さんの唇を塞ぐ。

「んんっ……んむっ……」

 そして舌を絡ませると、今度は私の口から何か違和感が溢れ出した。そう、αが絶頂した時に溢れる唾液のような蜜だ。

「んんんんっ!!」

 沙耶さんは少し抵抗するけれど、私は止まらない。溢れ出す粘液を彼女に注いだ。

「んんーーーーーっ!!」

 彼女は唾液を零しながら、溺れそうになりながらも私の全てを飲み込む。

「んむっ……んんっ……」

 こくん、こくん、と私の唾液を飲み干し終えたことを確認すると、私はゆっくりと唇を離す。私はそこでようやく意識がはっきりと戻り、自分のしてしまったことを認識した。

「――っ!!」

 やってしまった。やってしまった。絶頂した時に流し込んでしまったアレは下手したら男女の性行為と同様、妊娠させてしまうもの。それを飲ませてしまったのだ。

「んっ……はぁ……東郷さん……無理やり飲ましてくるなんて……」

 零れた唾液を制服の袖で拭いながら沙耶さんは私を卑下しているようにも見える目で見つめてくる。

「えっ……あっ……本当にごめん……なさい……」

 私はただ謝るしかない。こうなってしまっては責任問題だ。

「ふっ……あんなに激しくしたくせした後に謝るなんて情けない……。いいよ別に」

 沙耶さんはそう言うと自分の鞄から薬の錠剤を取り出すと、それを飲み込んだ。

「んっ……はい、これで問題なし。そうでしょう?」

 まるで常備していたかのように飲んだそれは間違いなく、成功以後に飲む避妊薬だった。

「あっ……ごめん……なさい……」

 意識がはっきりしてくる度に罪悪感に狩られる。あぁ、私は彼女としてしまったのだ。

「だからいいって……それより……東郷さんってやっぱりαなんだね」

「えっ……あっ……その……」

 α――。そう、私はαだから優等生だとか、優秀だと言われたくないがために自分がαであることを隠している。それが性行為をすることによって彼女に知られてしまう。

「別にαだからって何か言うつもりは無いけれど、あんまり迂闊にΩに近付かない方がいいよ。番もいないんでしょう?」

「その……本当にごめんなさい……」

 私は本来、叱るつもりが叱られている状況に酷く罪悪感を味わう。

「だからそれはいいって。ていうかそれより足拭いたら? 垂れてて何かエロいんだけど」

 沙耶さんにそう言われ、自分の足を見ると、驚くほどに私の恥ずかしい蜜が股下から零れていることに気付く。

「あっ……」

 私は途端に恥ずかしくなり、ポッケからハンカチを取り出すと、一生懸命拭いた。

「はは。おっかしい。発情期に当てられた時はあんなに積極的で激しいくせにシた後はそんなんになっちゃうんだ」

 本当に恥ずかしい。あんなに乱れて、嫌らしいことを晒してしまうなんて。

「きょ、今日のところは……その……私は何も言わないからこのことは黙ってくれない……?」

「いいよ別に。発情期なんてそういうもんだし」

 彼女はこういった経験に慣れたようにそう言った。そして、タイミングよく下校時間のチャイムが鳴り響いた。

「えっ!? やだ、もうこんな時間! 沙耶さんも早く下校しなさいね!?」

 私は沙耶さんを急かす。

「はいはい。わかりましたよ……。やっぱ優等生なんだね、東郷さんは」

「そ、それじゃあ私は一度教室に戻って帰るから沙耶さんも遅くならないように! あと……その……今日のことは出来れば忘れて……」

 私はそう言うと、返事も聞かずにこの部屋を抜け出した。

 

「また遊びに来てね、東郷さん」

 

 彼女が最後何を言ったのか上手く聞こえなかったけれど、私はそのまま教室へと向かった。

(うぅ……下着の中に水気が滴って気持ち悪い……)

 

 私はスカートが汚れないようにと慎重になりながらも、その日は帰宅したのだった。