不良真姫ちゃんと純情にこちゃん

前書き。

今回は不良になってしまった真姫ちゃんと、そんな真姫ちゃんでも大好きなにこちゃんのクズ百合です。

もうこのμ'sはクズ百合にしかなりません(断言)


 私こと矢澤にこは真姫ちゃんの事が好きだ。

μ'sの中でとか、友達としてではなく、恋愛感情として、一人の女の子として彼女が好き。

 でも、こんな気持ち、彼女に伝えられる訳がなく。

 

 この気持ちに気付いたのはいつからだろう。

 一緒にアイドルを続けてちょっと意地悪なところもあっだけど、それでも気があって、一緒にいる時が一番安心した。

 いつしか私は何かと真姫ちゃんが気になってしまうようになった。

 でも、そんな彼女が最近、一人でいる時が多いと最近気が付いた。

 最初は曲作りとか、他の用事でたまたまいないと思ったけれど、音楽室に行っても真姫ちゃんの教室や準備室に行っても見当たらない事が多い。

「真姫ちゃん、どうしたんだろう……」

 

 そんなある日、私はその理由を知る為に真姫ちゃんを尾行することにした。

 いつも通り、みんなと屋上で練習をし終えた後、それぞれで今日の練習についてや今後の方針について話している中で、真姫ちゃんは一人サラッと帰ろうとしていた。

「それじゃ私、先帰るわね」

 それぞれ練習後は自由な私達はそれが不自然には見えないけれど、最近の真姫ちゃんは何かおかしい。

 だからこそ、今日は真姫ちゃんの後を付けることにしたのだ。

「それじゃ私も先帰るわ」

 真姫ちゃんに気付かれないように少しだけ時間を置いて、急いで真姫ちゃんの後を付けた。

 真姫ちゃんはゆっくりと携帯を弄りながら階段を下りていて、私はそっと足音を立てずに後を付けた。

 すると、真姫ちゃんは音楽室や昇降口ではなく、別の場所に移動しようとしていた。

(え? こっちの方向って何かあったっけ……?)

 だんだんと人気のない場所に移動するにあたって隠れる場所が無くなっていく。

 気が付けば私は真姫ちゃんを見失ってしまった。

(しまったこれじゃ真実を解き明かせない……!)

 私は焦りを感じつつも周りを見渡す。すると、真姫ちゃんが普段使われていない空き教室へと入っていくのを発見した。

 私はそれを見てしまった時に“嫌な予感”をしてしまった。

 ゆっくりと気付かれないよう、真姫ちゃんの入っていった空き教室へと近付く。そして、そっと中を覗ける窓を見ると、窓際で外を覗く真姫ちゃんがそこに一人で居た。

 私はここで真姫ちゃんは何をするのだろうとドキドキと不安と興奮の入り混じった感情になる。

 でも、真姫ちゃんは窓際で外を眺めながら暫くの間、ぼーっと外を眺めるだけだった。それに私は思わず時間と本来の目的を忘れて見とれてしまった。

 しかし、その目的はすぐに思い出させられる。

 真姫ちゃんは鞄から何かを取り出すと、口に咥えた。

 私はそれがすぐにタバコだという事に気付く。ただ、あまりにも衝撃的で、受け入れがたい状況に私は呆然と立ちつくしてしまう。

 どうしてあの真姫ちゃんがタバコを? 何が真姫ちゃんを変えてしまったの?

 私は勇気を振り絞って扉を開け、真姫ちゃんの非行を止めに入る。

「あんた何してんの!?」

 私は震えながらも、真姫ちゃんに声を掛ける。

「え? 何でにこちゃんがここにいるの?」

 真姫ちゃんは私が来た事も動じずにタバコを吸い続ける。

「何でじゃないわよ……! あんた、自分が何してるか分かってるの!?」

  真姫ちゃんは私の問いには答えずに、ゆっくりとタバコを深く吸い、深い溜息をした。

 深い溜息の後、真姫ちゃんは鞄から小さなポーチのようなものを取り出すと、タバコをそこに仕舞い、落ち着いた様子で口を開く。

「何って別にこれくらいよくある事でしょ? それににこちゃんには関係ないし」

 私はスラスラと答えてしまう真姫ちゃんに、ただ呆然と立ちつくすしか出来ない。

「ていうかにこちゃん、どうして私の場所が分かったの? 私の秘密の場所なんだけど……」

 尾行するつもりが思わず飛び出してしまったとは言えず口ごもってしまう。

「えっと、それは……」

 私はどう言い訳をして良いか分からずにそのまま黙ってしまう。すると、真姫ちゃんは知っていたかのように続けた。

「まぁ、にこちゃんの事だからきっと付けてたんでしょ?」

 真姫ちゃんは私の事をまるで何もかも知っているかのように話す。

「で、にこちゃんは私にどうして欲しいの?」

 私は真姫ちゃんの問いに少し震えながらも答える。

「私は……どうして真姫ちゃんがタバコを吸ってるのか分からないけれど、理由があるならそれを知りたいし、た、大切な仲間が苦しい思いしてるなら助けたい……」

 私は真姫ちゃんの事が好きだからこそ、真姫ちゃんの支えになりたい。

 たとえそれがどんなに悪い事であっても。

「ふーん……これ吸ってる事咎めたりしないんだ」

 真姫ちゃんはタバコを仕舞ったポーチを揺らしながら答える。

「ねぇ、にこちゃん。キスしてあげよっか」

 真姫ちゃんは唐突にいじわるな笑顔の表情で私に向かってそう言った。

「え!? な、え……」

 私はあまりにも唐突で、でもそれはずっと願っていた事を言われ、思わず動揺してしまう。

「ちょ……今はそんな事関係ないでしょ!?」

 真姫ちゃんは座っていた場所から立ち上がると、どんどん私に近付いてくる。

「あー、もう無理。ずっと言わないでおこうって思ってたけど、にこちゃん可愛すぎ。そんなにして欲しいなら早く言えばいいのに」

 私は真姫ちゃんが近付くにつれて、少しずつ後ずさってしまう。

「ねぇ、自分で好意寄せてるの気付かれていないって気付かないの?」

 ゆっくりと、ゆっくりと真姫ちゃんは私に近付く。

「気が付くといつも視線を感じるその先には恋する乙女な表情で私の事見てた」

 夕陽が逆光になって真姫ちゃんの顔が分かりにくい。それでも、真姫ちゃんはいじわるな表情で真っ直ぐ私を見つめる。

「そんな可愛い顔されたら、こっちもドキドキするに決まってるじゃない」

 私のすぐ目の前まできた真姫ちゃんは私の顎を細く綺麗な指で撫で回す。

「え、あっ……」

 あまりの緊張に頭が真っ白になってしまい、身体が金縛りのように動かない。

「目、瞑って」

 真姫ちゃんは私の耳元に顔を近付けると綺麗な声で囁く。思わず私は催眠術を掛けられたかのように、指示に従って目を瞑り、真姫ちゃんを受け入れる姿勢をとってしまう。

 あぁ、とうとう私は真姫ちゃんとキスしてしまうんだ。そう思うと胸の鼓動がどんどん早くなり、手が震えてしまう。

「可愛い……」

 真姫ちゃんは目を瞑った私にそう言うと、次の瞬間、少し濡れた柔らかい感触が唇に当たり、キスされてしまう。

 真姫ちゃんはそのまま両手で私の顔を包むと今度は舌を潜り込ませようとする。

 私は思わず、更に後退しようとしてしまうけれど、後ろ足が壁にぶつかり、逃げ場を失ってしまう。

「んっ……にこちゃん、ちゃんと口空けて」

 真姫ちゃんは色っぽい艶やかな声で私に指示すると、また舌を私の唇を舐め回す。

 私はおそるおそる唇を空けると、すぐに真姫ちゃんの舌が蛇のように潜りこんでくる。

「あっ……んむっ……はっ……」

初めてする大人のキスに私は両手の行き場を無くしてしまい、棒立ちの状態で真姫ちゃんに身を委ねてしまう。

 真姫ちゃんはまるで手馴れてるかのように私の舌を嘗め回し、絡め合わせる。真姫ちゃんの舌はまるで生き物のように私の舌に絡みつき、粘液を混ぜ合わせる。

「んんっ……あっ……はぁ、んっ……」

 私の体はびくびくと恥ずかしい部分を触られてもいないのに身を震わせてしまい、絶頂に近い不思議な感覚へと陥ってしまう。

 私と真姫ちゃんはどれくらいの間キスをしていたのか分からないほど、長くゆっくりと舌を絡めあった。

「んむっ……ふぅ。ご馳走様」

 真姫ちゃんは最後にゆっくりと私の唇に軽いキスをすると、唇を離した。

 あまりにも長くキスをしていたからか、それとも初めての大人のキスに興奮してしまっていたのか、私と真姫ちゃんの唇から夕焼けに照らされた糸が零れ落ちる。

「今日はここまで。続きはまた今度してあげるわね」

 真姫ちゃんは私を堪能すると、そのままの足取りで後ろに置かれた鞄を回収して、その場を離れ帰ってしまった。

 私はしばらくの間、ふわふわと不思議な感覚に陥った後、その場にへたり込んでしまう。

「真姫ちゃんと……キス、しちゃった……」

 一瞬の、それでいて長いキスは深く私の脳裏に刻み込まれる。唇を触るとまだ、熱いキスの感覚がじんわりと唇を伝う。

 今の私は嬉しさの反面、困惑が強く、自分の感情が上手くコントロール出来ない。

 

 ただ、初めてのキスの味はとても苦く、大人の味がした。

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